GFSとは?
GFSとは、Graphic Financial Statementの略で、図形決算書分析のことです。
GFSは、決算書をまず図形というイメージで理解するところから出発します。図形分析(GFS)は、決算書の数値を入力し図形損益計算書(図形P/L)、図形貸借対照表(図形B/S)、図形キャッシュフロー計算書(図形C/F)を表示します。図形表示とすることで、数値では見えなかったものが浮き彫りになってきます。
下に示した図形P/Lと図形B/Sは、我が国の代表的自動車メーカーの直近期のものです。自己資本の大きさが際だっています。利益率の高さも注目です。図形C/Fは後に表示してあります。
図形損益計算書
図形貸借対照表
図形P/Lは、売上高(PQ)を右側にしてこの売上高を100とした売上原価(COG)、限界利益(MPQ)(GFSでは決算書上の営業利益を限界利益としています)、固定費(F)、利益(G)を左側に相対的な割合で表示しています。
Gの大きさを見てその大小を認識することが第一です。
COGやFの相対的な大きさも理解していただきたいと思います。
比較という手法を使って、前期に比べてどうか、ライバル企業と比べてどうかなどを分析するのです。
図形B/Sは図形分析の真骨頂です。見方を少し要約しますと、
- 1.各勘定の大きさを見て、特に重要な勘定が何かを理解します。
- 2.自己資本(10)の大きさをよく見て、会社の過去の蓄積状況を認識します。
- 3.借方(左側)と貸方(右側)との対応関係、たとえば、債権(2〜4)と債務(7〜8)、自己資本と
固定資産(5)、借入金(6と9)と資産全体との関係を見ます。
会社を選んで、決算書を入力し是非、その会社の形を見てください。
B/SとP/Lだけでは会社を分析するのに十分ではありません。キャッシュフローと原価や経費の内容も知る必要があります。
1.キャッシュフロー計算書(C/F)
C/Fは、通常2期間の決算書と追加的な情報から作成します。キャッシュフローを営業活動キャッシュフロー(OC)、投資活動キャッシュフロー(IC)、財務活動キャッシュフロー(FC)に分け、運用と源泉を明らかにします。中小会社にとって、資金は利益と同等かそれ以上に重要性を持っています。資金流動性は中小会社にとって核心となりました。
本業の活動からの営業活動キャッシュフロー、さらに言えば、それから投資活動キャッシュフローを控除したフリーキャッシュフローを極大化することが益々重要となっているのです。
2.原価・経費内訳明細
原価や経費の分析も重要です。
GFSでは、原価の構成項目である材料費(ME1)と人件費(LC1)及び減価償却費(DP1)の3項目にその他経費を加えた4項目の金額と原価の中に占める割合をイメージ的に捕らえられるように工夫してあります。販売費管理費についても、人件費(LC2)と減価償却費(DP2)及びその他の費目の数値と、これらの3項目の構成割合をイメージ化しています。また、それらの項目の割合を色別に表示し、費用の危険度が解るようにもしています。さらに、特別損益についてもその内容を入力することで、臨時的なもの、金額の大きさと当期の業績への影響及び来期以降への影響などの内容検討が経営改善の観点から必要ですので、表示できるようにしてあります。
先に、P/LとB/Sを示したメーカーのC/Fと原価・経費の内訳を示します。
図形原価経費内訳明細書
図形キャッシュフロー計算書
■GFSで会社を変える
図形決算書分析をどのように経営改善に利用するのかについて説明しましょう。
図形決算書分析をして会社の形を理解しましたので、
- 1.図形から改善すべき勘定科目を特定します。
- 2.改善の方法を仕訳の法則(貸借平均の原理)から検討します。
- 3.具体的な問題点を内部統制や比較の手法で発見します。
通常は、金額が大きな科目には、重要な問題が潜んでいます。優先順位を重要な科目から始めることが、会社の経営改善にもっとも的確にアプローチできます。
その後、優先順位の順に検討をしていくのがいいでしょう。どの会社でも作成していると思われる、勘定内訳明細書を検討すれば、いくつかの問題点とその解決方法が見いだされると思います。
勘定内訳明細を見るときの基本は、金額の大きさと発生からの時間です。内容が変化しないまま残っている残高、いわゆる滞留や不良化した債権や債務には要注意です。
もう一つの要点は、時価との関係です。内訳明細書に計上されている残高と時価とをいつも念頭に置いて見る必要があります。時価が取得価格を大幅に下回っている場合は、会計処理をする必要があるからです。この資産や負債をスリム化することは経営改善の重要な一歩なのは、別に説明してあるとおりです。
2の改善の方法を仕訳の法則(貸借平均の原理)から検討するのが、次のステップです。一つの例で説明しますと、ある会社の債務(貸方)が異常に多いことがGFSで示されたとします。そこで、債務を圧縮するため、返済するためには資金という借方の現金の減少が同時に起こります。資金のない場合には、借方の固定資産を処分するという方法が検討されるでしょう。これも処分によって得た資金で債務を返済することで、借方の固定資産が減少します。
このように貸方を変えるためには借方が同時に変わるという貸借平均の原理が働きますので、GFSから変えるべき勘定を特定しますと、同時に変わる借方を考えながら、改善の選択肢を検討する事が重要なのです。GFSで会社の形を変えることをめざすのです。
3の具体的な問題点を内部統制や比較の手法で発見するというのは、債務の圧縮などの場合にはあまり使えませんが、売上、仕入、経費などP/L項目で威力を発揮します。比較による異常点の発見や、チェックリストにより問題点を抽出するのです。
■スリム化は経営改善の王道
GFSでは図形だけでなく、分析比率を表示することにしています。B/Sに関連した比率として、次の7つを表示することにしています。
- 1.流動比率
- 2.固定長期適合率
- 3.売上債権回転期間
- 4.棚卸資産回転期間
- 5.買掛債務回転期間
- 6.総資本回転期間
- 7.総資本経常利益率
P/Lでは上の7.に加え、次の2つを追加しています。
- 1.総資本当期利益率
- 2.損益分岐点売上高
これら比率の中でも特に重要なのは総資本利益率です。総資本利益率は、B/Sの集約である総資本とP/Lの結果である利益との比率である点において、決算書、言い換えれば会社のゴールを表すものなのです。
この点は総資本利益率は、次のような算式に展開できることからはっきりと解りますし、経営改善の重要な手段を提供するものであることが解るのです。
総資本利益率の計算式
総資本利益率を高めるには、利益を増加させることが一番ですが、総資本(総資産)を圧縮することも利益率を高めることに繋がることが解るのです。資産のスリム化の方法を検討することは総資本利益率と総資本回転率との相関関係にありますから、一方がたとえ下がっても、一方をより以上に高めることによって総資本利益率というゴール(目標)に達することができることを意味します。与えられた条件の下で、経営改善のために総資本利益率を最大化する選択肢が複数存在していることを、知っておきたいものです。
■内部統制の検討と比較の手法
勘定を特定し、改善のための問題点を発見するために利用される手法に、内部統制の検討と比較の手法があります。
まず、経営改善のための問題点を発見するために内部統制を検討することで多くの問題点を発見できます。この場合、会計監査の手法が手がかりとなります。最近の会計監査は、固有リスクと統制リスクを評価して、虚偽の無い結果を得ようとするのですが、経営改善に取り組む場合、とりわけ統制リスクの検討は大いに参考になります。
統制リスクの評価が、勘定科目と関連させて内部統制の評価を行うという手法を採っていますので、GFSにも整合しています。取引サイクル(例えば販売取引)をプロセス、業務区分の流れで勘定科目と関連させながら内部統制をつぶさにチェックしていくことによって、効率の悪い事務処理、コミュニケーションの不足、不十分な承認や検証方法などはもとより、必要な管理の仕組みの不備などいろいろの問題点が浮かび上がってくることでしょう。
経営改善の問題点を発見するもう一つの手法として、比較があります。
比較の目的は、2つあります。第一の目的は、異常点を見いだすところにあります。異常点があれば、その原因を確かめ、改善方法を模索するのです。比較の第二の目的は、目標との比較です。分析比率や人件費その他経費を他社と比較して自社の位置を確認し、その目標となる他社に到達する具体的な改善方法を検討することなどは、この目標を持つための比較の例です。
比較は実に様々な場合に使われますが、最も一般的な比較の例は次に述べるセグメントに現れます。また、過去との比較は、現在を評価するために必要ですし、それが将来の方向を示す場合もあります。
推移分析で有用な技術が確立しています。比較は、金額の比較に限りません。これも次の項で述べる数量の視点を入れて比較することも勿論重要です。比較で大切な点でありながら難しいのは、事実との比較です。例えば、事実の裏付けのない支出は、大きな問題です。金額の表面的な比較だけでなく、事実との関係にも注意を払う必要があるのです。
■経営改善と2つの視点
改善方法を検討する場合に考えるべき重要な2つの視点があります。
1.セグメント視点
セグメントとは、分割や部分の意味ですから、問題点を解決するためにできるだけ対象をいろいろな方法で部分・内訳に分解して問題の原因を探ろうとする考え方です。決算書の付属明細書や内訳明細は、最も基本的なセグメント情報なのは述べたとおりです。
例えば、年間の売上を増加させるのに、まず毎月の売上がどうなっているかを検討するでしょう。特に、落ち込んでいる月があれば、その原因を分析します。季節的な問題なのか、取引先が失われたのか、営業上の問題かなど、原因を相手側の問題か、自社の問題か、避けられた原因か、不可避的な原因かなどいろいろな面から検討すると思います。
このように原因を分析する場合には、できるだけ内容を部分や内訳に分けることにより、原因が特定しやすくなります。売上を得意先別、部門別、製品別、地域別、担当者別、などに分解して分析することによって、問題点を浮き彫りにする方法は一般に広く行われています。
2.数量の視点
数量の視点とは、経営に数量概念を取り入れることです。決算書の会計情報は、金額で表示されますので、その金額の裏にある数量的な情報に気付かない場合があります。
多くの会計情報も数量情報によって支えられています。
例えば、ある製品の売上高は、単価と数量の積の結果です。売上高が単価と数量の関係によって変わるということは、価格を変えることで売上高が大きく影響されるということですから、価格をいくらにするかという価格政策が、経営の重要な戦略となることは、ご存じのとおりです。
ここから損益分岐点分析や個変分析(固定費と変動費を分析することで損益にどう影響するか)が重要な経営管理手法となりました。売上高に限らず、経営情報のあらゆる面に数量的な視点を導入することで、多くの経営改善方法が俎上に挙がってきます。従業員数、客数、利率など代表的な数量概念を金額情報の反面としてとらえることで、結果を分析することに利用するだけでなく、今後の経営改善の重要な戦略となります。平均概念である一人あたり売上高、平均客単価、平均使用量、平均利率などもこの数量概念の利用の延長線上にあります。
■ITとグラフの利用
1.ITの利用
現在の経営は、ITによって支えられていると言っても過言ではありません。しかし、中小会社にあっては未だITが十分に生かされていない場合も多く見受けられます。しかし、ITは、単なる情報化ではありません。IT化によって、業務の効率化と人の最適な配置が図られます。どの業務をIT化するのか、IT化することでどこが変わるかを検討することが必要です。
筆者はITコーディネータを利用するのも一つの選択肢としてお奨めしたいと思います。ITコーディネータは、中小会社が従来、どちらかといえばベンダーといわれるハードやソフトの供給者の主導で進められてきたIT化を、経営者とベンダーとの間に立って会社に最適なものをできるだけ最小のコストで実現する仲介者として設けた資格です。
ITコーディネータが目指しているものは、経営目標を設定し、これを実現・支援するためにITを利用することを目指します。経営のどの部分をIT化すれば、業務を効率化でき、組織のコミュニケーションを共有化し、生き生きした組織に変えるとともに、最終的な経営目標を実現できるかを考えていきます。
会計ソフトを導入するだけで業務を効率化できる場合も、勿論無いわけではありません。しかし、できるだけ少ないコストで全体の経営目標を実現するための最新のIT技術を見据えたIT化が求められます。
最近話題になっているバランススコアカードは、ITコーディネータもよく利用する有用な経営手法です。
2.グラフの利用
経営を判断するのにグラフが有効なこともよく知られています。会計情報をグラフで作成するには、Excelを使うことで、通常は間に合います。棒グラフ、折れ線グラフが代表的ですが、積層棒グラフ(積上げ棒グラフ)や複数軸棒グラフを使うと、セグメント別の多様な比較や推移が把握できます。レーダーチャートやZチャートも有用です。
また、複合グラフのように作成に一定の技術を要するものもありますが、円グラフ、散布図、ドーナツグラフなどExcelがいろいろのグラフを提供しています。
勿論、グラフだけでは十分ではありません。グラフは必ず数値と同時に検討することが必要です。アナログ表示のグラフにデジタル表示の数値を組み合わせることで理解が万全となるのです。




